幼い頃の少女は、とても艶やかな黒髪と気さくな笑顔が似合うごく普通の女の子だった。

​　少女には夢があり、いつか自分の翼で外の世界を見たいと両親にいつも話をしていた。

　ここには無い色鮮やかな花や、見上げると壮大に広がる青く透き通った空があるという。

​

　そんな夢を見る少女に唐突と訪れた両親の死によって、その夢は打ち砕かれた。​

​　母の死の間際に真実を知らされた少女は、『悲しみ』と『怒り』、そして『憎しみ』によって傷ついた心を具現したように、目元や髪の一部が赤く染まっていった。

​

　それから少し経ったある日、この世界の均衡を二人の天使が打ち壊したことで、この地に縛られていた者たちは解放される事となった。

　無情にも今になって少女の夢は叶った。

　外の世界を見る夢はもうとっくに捨てていたが、少女は新しい夢を見つけることができた。

　『憎しみ』から生まれた『復讐心』は少女に生きる理由を与え、太陽の光を遮る大きな黒い翼で外界へと羽ばたいていった。

​

　彼女を救えるものがあるとすれば、更なる大きな闇によって彼女を飲み込むか、彼女の闇をも打ち散らすほどの『光』だけだろう――